“やりがい”がないといけないの?2 ~ 「人生の目標」がなくても大丈夫

以前書いた記事「“やりがい”がないといけないの?」で、やりがいがないことや成功体験が思いつかないからと言って、それはおかしいことでも他者よりも劣った人生を送っているわけではないということをお伝えしました。
今回は同じ”やりがい”に通じる話として「人生の目標」の位置付けについてお話しします。
大丈夫、明確な目標がなくても充実した人生を送れます!

キャリアビジョンづくりの場面で

最近は「副業・複業」や「リスキリング」などの流れが加速しており、それに伴い従業員にキャリア教育やキャリアビジョンづくり研修を実施する企業も増えています。

そういった教育や研修で最後に問われることが多いのは「キャリア(もしくは人生)で何を実現したいのか?」です。受講生は自分が実現したいビジョンとして、何かを「達成・入手」したイメージを思い描くようにカリキュラムが組まれます。

自然にキャリアビジョンを描ける人もいれば、それができない人も少なくありません。「“やりがい”がないといけないの?」で挙げたように成功体験が思いつかない人もいれば、どうしても「何を達成したいか?」がわからない人もいるのです。
しかし会社で行う研修には時間的制約があるため、個々の受講生の状態に合わせることはできません。本心からの答えが見出せない受講生も、研修の最後には「とりあえず」の積み重ねでビジョンらしきものを言語化することになります。しかしこれは「書かなければいけないから書いた」ものであり、本当の意味で自分自身の目標ではありません。結果、キャリア自律やモチベーション、エンゲージメントなどへの効果をほとんどもたらさず、それまでとあまり変わらない気持ちで仕事に取り組むことになってしまいます。
それだけではありません。自分の人生の明確な目標を持てなかった方は、納得して目標を見定めてモチベーション高く仕事に取り組むことができている人と自分を比べてしまい、自分が何か劣った存在であり、質の悪い人生を送っているような感覚さえ覚えることもあるようです。

コンサルティング的アプローチの弊害

なぜこんなことになってしまうのでしょう?その理由について私は、現在のキャリア観があまりにも「ゴールへの意識」、「熱量やパッション」、「やり抜く・達成」などといった要素を重視し過ぎているからではないかと思っています。ある意味、人生とは自分が思い描く夢のゴールに辿り着くためのプロセスであると定義を押し付けられているようにすら感じます。

ゴールを決め、現実を理解し、そのギャップを整理して解消する手段を具体化する…。これはコンサルティングの手法です。コンサルティング自体は素晴らしいものであり、間違ったことでも何でもありませんが、必ず「どこに辿り着きたいのか?」が問われます。つまりゴールを決める必要があります。

だからゴールを決められない人にとって、このアプローチは苦しいものになってしまうのでしょう。

「人生の目標」を決めなくていい

人生の目標・ゴールを決められない人は劣った存在なのでしょうか?生きていく上で目標を決めなければいけないのでしょうか?
私はそうは思いません。もちろん目標がある方が良いことはたくさんありますが、実際に幸せそうな方や充実した人生を送っている方がすべて明確な目標を持っているわけではないはずです。

私は「後悔しない人生」を実現するためのキャリアビジョンに必要な要素は大きく2つしかないと考えます。それは

  1. 自分が「自分らしく、不安なく、安心して過ごせる状態」が何かを認識する
  2. その状態を手に入れた先、自分の人生がどうなるのかについて仮説を立てる

です。

1で手にいれる「状態」はもちろん何かを達成した「結果」もあるでしょうし、何かが継続されている「プロセス」の場合もあります。つまりキャリアビジョンとは「達成すること」だけではなく、「維持し続けること」であっても良いのです。自己実現の在り方や価値観は人それぞれです。

そして2の仮説とは、別の表現をすると「自分の選択の結果を他責にしないこと」という意味です。自分で選択することだからこそ本心から打ち込めるし、結果から学びを得ることができます。誰かから借りてきた目標や価値観に基づいて行動すると、失敗したときにその”誰か”のせいにしてしまいがちです。

湧き上がるパッションがなくても充実した人生を送ることはできる

考え方は人それぞれです。上記の私の考え方が正解というわけでなく、キャリアビジョンはゴールがないと成立しないという方もいらっしゃるでしょう。
でも私は「自分の人生に意味が感じられ、楽に生きることができる指標」であれば、それは何であっても良いのではないかと思います。その結果を受け入れる責任を持つことができれば、選択は人それぞれ異なっても良いはずです。

だから「パッションや熱意なんて感じたことがない」、「やりたいことが見つからない」という方もきっと大丈夫です。自分が楽に生きることができる時間を入手し・維持し続けることができれば、それはきっと納得できる人生なのだと私は思います。

自分の人生に自信を持ちましょう。他者と自分を比べるのを止めましょう。


カウセリングやコーチングにはいくつかの「流派」があります。型に嵌めるのを良しとする考え方もあれば、世界とのつながりなど生物としての存在まで立ち戻って考えようという哲学的な考え方もあります。そのどれもが正解というわけではなく、間違っているわけでもありません。

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